プットレシオスプレッドーオプション戦略の解説

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オプション取引における「プットレシオスプレッド」戦略について、その仕組み、メリット、そして特に重大なリスクについて詳しく解説するものです。高い勝率を誇る一方で、「即死ポジション」とも呼ばれるほどの危険性を内包するため、安易な実行は厳禁であり、深い理解と慎重な運用が求められます。

目次

プットレシオスプレッドとは?

プットレシオスプレッドはニアのプット買いと複数のファープット売りで構成されます。

特徴:

  • 通常、売るオプションのプレミアム合計が買うオプションのプレミアムを上回るため、ポジションを組んだ時点で利益(クレジットの受け取り)が発生します。

プットレシオの損益図:損益の仕組み

プット25000買い1枚、プット24000売り3枚 のプットレシオ

クレジットは受け取り満期35000円

損益の仕組み

この戦略の損益は、満期時の市場価格によって以下のようになります。

市場の状況損益解説
予想通り(横ばい or 上昇)利益(限定)市場が横ばいで推移するか、上昇した場合、受け取ったプレミアムがそのまま利益となります。
少し下落利益(最大)売ったプットの権利行使価格付近まで下落すると、最大の利益を得られます。
大きく下落(逆行)損失(無限大)売ったプットの権利行使価格を大きく下回ると、損失が急激に拡大し、理論上は無限大になります。

プットレシオのグリークス:内在するリスク

ガンマショート、ベガショート、セータプラスこのガンマショートとベガショートが効いてきます。

ガンマ (gamma):ショート

  • 最大のリスク要因。相場が大きく動く(特に下落する)と、損失が加速度的に膨らみます。急落相場では致命的です。

ベガ (nu):ショート(マイナス)

  • リスク要因。市場の不確実性(ボラティリティ)が上昇すると、ポジションの価値が下落し、損失が発生します。急落時にはボラティリティも急騰することが多いため、ガンマショートと合わせて大きな損失を生み出します。

最大のリスクと注意点

プットレシオは逆行するとキツい

この戦略の最も重要な点は、リスク管理です。

  • 損失無限大のリスク: 相場が逆行(急落)した場合、損失は青天井です。「数万円の利益を狙って、数十万〜数百万円の損失を被る」可能性があります。
  • 証拠金の急増: 損失が膨らみ始めると、必要証拠金が急激に増加します。これにより、ポジションの維持が困難になり、最も損失が大きなタイミングで強制的に損切りさせられる(追証)リスクがあります。
  • 安易な多用は禁物: 高勝率であるため利益を積み重ねやすいですが、たった一度の失敗でそれまでの利益をすべて吹き飛ばし、さらに大きな損失を出す可能性があります。

証拠金についてはこちらの記事でも記事にしています👇

推奨される使い方と代替戦略

この記事では、プットレシオスプレッドを単体で積極的に使うことを推奨していません。その性質上「先物ロング(買い)」に非常に近いため、相場上昇を期待するなら、よりリスクが限定的な他の戦略を検討すべきです。

推奨される限定的な活用法:

ヘッジとしての利用:

  • ガンマロングやベガロングのポジションを持っている際に、その利益確定やリスク調整(全体のガンマやベガを減らす)目的で組む。

ボラティリティの低下を狙う短期売買:

  • インプライド・ボラティリティ(IV)が過剰に高い局面で、短期的にポジションを取り、IVが低下した(剥げた)ところで素早く利益確定する。

    リスクを限定する工夫:

    買いの枚数を売りの枚数より多くする(プット・バック・スプレッド)ことで、急落時に利益が出る構造に切り替える。

    損失が無限大にならないよう、売っているファー・プットの一部をさらに遠いプットの買いでヘッジする(バタフライ・スプレッドに変形させる)。



    まとめ

    プットレシオスプレッドは、相場が安定している時期には高い確率で利益をもたらす魅力的な戦略です。しかし、その裏には**「ガンマショート」と「ベガショート」という深刻なリスクが潜んでおり、一度の相場急変で再起不能なほどの損失を被る危険性**があります。

    この戦略を用いる際は、損失無限大のリスクを常に意識し、売り玉の数を厳しく管理し、損失を限定する工夫を施すなど、徹底したリスク管理が不可欠です。初心者やリスク許容度の低い投資家が安易に手を出すべき戦略ではありません。

    オプショントレーディングおすすめ本

    オプショントレーディングおすすめ本を紹介します。

    Trading Options Greeks: How Time, Volatility, and Other Pricing Factors Drive Profits (Bloomberg Financial Book 159) (English Edition)

    英語ですが最近読んだ本では一番のお気に入りです。ボラティリティートレードについて詳しく解説しています。

    ボラティリティートレードの実際や、各グリークスのリスク管理やポジション調整などについても触れられています。


    オプションボラティリティ売買入門 (ウィザードブックシリーズ)

    定番本です。ボラティリティートレードについて日本語解説されている貴重な本です。1点、レシオスプレッドを推奨する記述がありますが、ネガティブガンマポジションは安全ではありませんので注意が必要です。

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    この記事を書いた人

    ボラティリティトレードを意識してオプショントレーディングのエッジを追求していきたいと研究の日々です。よろしくお願い申し上げます。

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